補足 老舗大国ニッポン その2

老舗の特徴1
それでは、なぜ世界中の老舗が日本に集中しているのでしょう。
老舗の特徴について若干ふれてみたいと思います。

老舗の創業以来の危機となった出来事
帝国データバンクでは百年続いた企業に対してアンケート調査をしています。
調査のうち「創業以来の危機となった出来事・事件」では、「戦争」が最も多く、「主力商品の売上激減」がこれに続きます(百年続く企業の条件 帝国データバンク 資料館・産業調査部編 朝日新書 2009年9月)。

・「戦争」
京都で先の戦争というと、街の大半が焼失した応仁の乱(応仁元年(1467年)~文明9年( 1477年))のことをいうそうです。京都の知り合いに聞いてみたところ「おじいさんから聞いたことがある」とのことでした。
たしかに、第二次世界大戦で、日本の主要都市は焦土となりましたが、京都は戦災を免れています。
日本でも、戦国時代、明治維新と争乱はあるのですが、それらは主に武士同士の争いであり、町人や農民といった領民をせん滅する様な、泥沼の内戦は見当たりません。
将棋のように、日本の領地争奪戦では領民も争奪した者の財産となるからでしょう。
他国からの直接支配・攻撃を受ず、永らく平和を享受した日本ですが、第二次世界大戦では、設備の消失、経営者や従業員の戦死、原料の調達困難などで経営危機に陥っています。
「安全」は産業を支える屋台骨であり、これなくしては商売が成り立ちません。
老舗の数はその国の「長期安全度」を測る尺度になるのではないでしょうか。
アフリカでは内戦が続き、ほとんど無政府状態ある国がありますが、これらの国では経済どころではなく、国民は貧困に苦しんでいます。(注)
ちなみに私は「安全」とともに「道徳」が産業の重要なインフラの一つと考えています。
道徳なくして「町人の正義」(千年働いてきました 野村進著 角川書店 2006年11月 p213)はありません。

・「主力製品の売上激減」
自社の商品、あるいは商品群別の売上の構成をみて下さい。
製造業ではほとんどの企業で、小売でも、スーパーやコンビニなど雑貨を扱う業種は別として、かなりの企業で上位20%以内の商品群(主力商品)で売上の80%以上が構成されるはずです。
売上の大部分を主力商品に頼るというのはなにも老舗に限ったことではありません。
たのみの綱の主力商品の売上が激減すれば、どのような企業でも、それはそのまま経営危機につながります。
現状にこだわらずに状況に応じて業態を変えれば?と思われるでしょう。
確かにその時代に応じた業種に変異し続ければ、ベストかもしれません。
しかし、競争相手を出し抜いて、(数百年も)変異し続けることができるのでしょうか。
時代に応じて業態を変えればよいというのは、新しく事業を始めれば誰でも確実に成功できる、という前提が必要です。
老舗の場合、超~長期にわたる本業の堅持が永続の秘訣である場合が多いのです。「不変か?変化か?」「保守か?革新か?」という「老舗のジレンマ」に陥ります(次章か、その次の章のテーマです)。

(注)
外務省では海外危険情報を4つのレベルで出しています。なお、1~4のレベルの数値は例えば地震の震度のように公式なものではなく、一般的に言われているものです。
(外務省 海外安全ホームページ http://www.anzen.mofa.go.jp/)

レベル1  十分注意してください その国・地域への渡航、滞在に当たって特別な注意が必要であることを示し、危険を避けていただくよう、おすすめするものです
レベル2  渡航の是非を検討してくださ その国・地域への渡航に関し、渡航の是非を含めた検討を真剣に行っていただき、渡航される場合には、十分な安全措置を講じることをおすすめするものです
レベル3  渡航の延期をお勧めします その国・地域への渡航は、どのような目的であれ延期されるようおすすめするものです。また、場合によっては、現地に滞在している日本人の方々に対して退避の可能性の検討や準備を促すメッセージを含むことがあります
レベル4  退避を勧告します・
渡航は延期してください
その国・地域に滞在している全ての日本人の方々に対して、滞在地から、安全な国・地域への退避(日本への帰国も含む)を勧告するものです。この状況では、当然のことながら新たな渡航は延期することが望まれます
アフリカのある国に「発出」された、レベル4の概要です。
「全土を実効的に支配する国際席に承認された政府」がなく、「各地で爆弾攻撃が行われ市民を含む手榴弾・重機関銃・対空機関砲を使用」しての「抗争は衰えること気配はなく」、「外国人を標的とした殺傷事件、誘拐事件が増加」し、これから渡航しようとする人は「どのような目的であれ絶対に見合わせて下さい」、すでに滞在している人は「最新の情報の入手に努め、十分な警備措置を講じた上で直ちに同国から退避されるよう改めて強く勧告します」。
・・・この国の会社から商談があると持ちかけられて、出かけられますか?

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