6-4 経営・管理・作業 経営におけるグレシャムの法則

経営・管理・作業
中小企業の経営者に聞いてみましても、経営者が一所懸命「作業」しても、「作業」で一日に稼げるお金は、せいぜい2万円~3万円程度です。
ところが、経営者が「経営」の仕事に立ち返ったとき、一瞬にして将来利益を稼ぎ出してしまうことがあります。

3年から5年の累計利益ベース(キャッシュベースと言ってよく、決して売上ベースではありません)で数千万~数億の利益を稼ぐのですから、経営は「一所懸命に働いて一日にいくら稼ぐか」という価値判断には馴染みません。経営と作業では、「仕事」の中身が本質的に異なるのです。

そこで、「仕事」の中身を、「経営」「管理」「作業」に分類して、「儲け」に関連付けてみました。


これが中小企業の経営者が陥りやすい「日常業務の惰性の罠」です。
経営者の本来の仕事は経営であり、将来をみすえた儲けの仕組みづくりなのですが、「日常業務の惰性の罠」にはまってしまうと「目の前の仕事」しか見えなくなってしまいます。
先程の「将は弓を引くな」というのは、日常業務の惰性の罠を戒めたものです。

一生懸命働いても効果の出ない経営者には「知恵で儲ける」ことを勧めているのですが、「知恵で儲ける」というと、時折、勘違いされる経営者がいます。
「知恵で儲けるというのは楽して儲けるということですか?」・・・・とんでもない!!

「目の前の仕事」は目に見えるので分かりやすく、何も考えずにただひたすらに「こなす」だけですので、(日常業務の惰性の罠にはまっている)経営者にとっては、経営より作業の方が楽なのです。
知恵熱知恵で儲けるというのは当初、若干の苦痛が伴うようです。
実際に、戦略に関する宿題を出すと、知恵で儲けることの難しさを知ることになります。
「どちらの方が楽ですか」と聞くと、ほとんどの経営者が「作業の方が楽です」と答えます。

 

経営におけるグレシャムの法則
これは大企業にもいえることなのですが、いくら社長が経営者だからといって、社長が「経営」をしているとは限りません。
社長の「仕事」の中身をみると、「経営作業」と「(本来の)経営」とに分かれます。「経営作業」ももちろん重要です。しかし、社長室で「経営作業」に追われていても、それは「作業」であり「経営」ではありません。
悪貨は良貨を駆逐するという「グレシャムの法則」は有名ですが、1978年にノーベル経済学賞を受賞したハーバード・A・サイモンは「ルーチンな仕事(日常業務)はノン・ルーチン(創造的)な仕事を駆逐する」という経営のグレシャムの法則を提唱しました。日常業務の罠にはまると創造的な仕事ができなくなるということです。

 

戦略マインド
自社、あるいは同業他社でも「戦略」という言葉が一週間、一ヶ月のうちに何回使われるでしょうか?他社の経営者も仕事に追われて「経営」をしておらず、まして、「戦略」などという言葉は死語に近くなっているはずです。
私の知る限り、(もちろん例外もありますが)中小企業の経営者はほとんど本来の経営をしていません・・・・そして、逆説的ですが、実はここに成功の鍵があります。中小企業の事業には戦略オプションがたくさんあり、差別化が図りやすい(それゆえに大企業が入り込めない)という特徴があります。
同業他社にも戦略マインドがないのであれば、ほんの少し戦略マインドもつだけでも効果が出るのです(・・・実際に出ています)。

戦略マインドを持つための秘訣は・・・・・経営者が「日常業務の惰性の罠」から抜け出し「経営」にほんの少し時間を割けばよいのです。