2-5 経営戦略論の統合・・・資源アプローチ

実際に経営者に聞いてみました。
「同じ業界でも利益の出方がちがうと思いますか?」
経営者は異口同音に「違う」と答えます。

「利益が異なるのはなぜですか」と聞くと
「会社の持っている『持っている技術』『設備』『人』などの資源が異なるから」と理由まで知っています。

この経営者の常識を掘り下げて、理論的に体系化したのが資源アプローチです。

・資源アプローチ
高い収益率の原因を「内」の「要因」に着目するアプローチです。
たしかに、業界によって収益率は違います。しかし、同一業界内でも収益率の高い企業と低い企業が存在するのも事実です。
実は、同一業界内の企業ごとの収益格差は、業界ごとの平均収益の格差よりも数倍大きいということが実証されています。(ウォートンスクールのダイナミック競争戦略 ジョージ・デイ デイビッド・レイブシュタイン編 小林陽太郎監訳 東洋経済新報社 1999年10月 p60)
ポジショニングなんかよりも、高収益の源泉は企業内部の優れた資源やこれを使いこなす能力(ケイパビリティ)にあるのではないかというのが資源アプローチです。
ジェイ・B・バーニーは企業の有する資源やケイパビリティのうち、
V(Valuable)経済価値があるだけでなく、
R(Rare)希少性があり、しかもそれが
I(Inimitable)模倣困難で、この貴重な資源を十分活用できるように
O(Organized)組織が統合されていれば、持続的な競争優位の源泉になると提唱しました。(企業戦略論 ジェイ・B・バーニー著 岡田正大訳 ダイヤモンド社 2003年12月p251)

頭文字をとってVRIO(ヴリオ)といいます。
バーニー教授は、さらに、「企業戦略論では企業がいかに大きな意思決定(big decisions)を正しく行うかを競争優位の源泉としてきた。」とした上で、「無数の小さな意思決定(numerous small decisions)を正しく行う能力に依存している場合もある。
この無数の小さな意思決定を上手に行う能力はその企業の外からはほとんど目にすることができない。」といっています。(企業戦略論[上] ジェイB.バーニー著 岡田正大訳 ダイヤモンド社 2003年12月 p263~264)
企業の外部から目にすることができない無数の小さな意思決定は模倣困難であり、むしろこのような意思決定の方が、大きな意思決定よりも、持続的な競争優位の源泉になるというのがこのアプローチの特徴です。

 

・資源アプローチとセレクションシステムとの関連づけ
資源アプローチが提唱されるきっかけとなったのは、日本企業の台頭にあります。
C・K・プラハード教授とゲイリー・ハメル教授は「企業のコアコンピタンス(The Core Competance of the Corporation)」という論文の中で優れた経営の例として登場するのがNEC、キャノン、ホンダ、カシオ・・・といった日本企業です。(競争戦略論 青木矢一 加藤俊彦 東洋経済社 2003年3月p90)
ここで、コア・コンピタンス(Core=核 Competence=能力)とは競合他社に対して圧倒的に優位にある技術やノウハウのことで顧客価値を生み出している経営資源の中核となるものを意味します。
さらに、どのような資源がコア・コンピタンスとして機能するかという研究から登場したのが資源アプローチ(資源ベース理論 Resource・Based View)です。

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戦略論の二大潮流として対立しているのが、企業の収益の源泉を構造に求めるポジショニング・アプローチと、企業の持っている独自の経営資源によるものだとする資源アプローチです。
構造か?資源か?・・・従来、この二つは互いに相いれないものとして理解されてきました。両者を関連付けるものがなかったのです。

「構造」か「資源」か?・・・この2つのアプローチはコインの表と裏の以上の関係にあります。表裏一体では表と裏は、コインをはさんで背中合わせになっており、なお対立が残るからです。まして、どちらかがどちらかに従属するなどという関係にはないのです。

コインの表の中に裏があり、裏の中に表があるのですから、不思議な感覚です(私は不思議だと思っていまいました)。このコインは表だけを見ようとすると裏が消え、裏が消えると同時に表までも消えてしまうという、奇妙な性質を持っていたからです。

ネットワーク思考にたって戦略論を眺めると、この2つのアプローチを同時に眺めることができます。
企業の収益の源泉を「ネットワーク」の構造に求めるポジショニング・アプローチであり、「ネットワーク」の結び目(ノード)である企業の持っている独特の経営資源によるものだとするのが資源アプローチです。
両者は一見全く別の理論のようですが、実は切っても切れない関係にあります。なにしろネットワークの構造とノードなのですから・・・どちらか一方がなくなると双方とも消えてなくなるのです。
生物でいうなら生態系の特徴と、その構成員のもつ独特の資源の、どこに対立の余地があるのでしょうか?

ポジショニング・アプローチと資源アプローチについては、次の
「補足・・・ポジショニング・アプローチと資源アプローチの統合の図説」
で説明します。

 

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