コラム サメとイルカとイクチオサウルス・・・競争戦略の収斂

競争曲線で、様々な競争戦略をグラフにして視覚化していくと、競争戦略の特徴が見えてきます。
業界や時代に関係なく、似たような競争戦略をとった場合、似たような形がでてきます。まるで、生物の進化戦略でみられる収斂(しゅうれん)のようです。

 

イルカは魚で、ウシやウマなどの、いわゆるケモノ(哺乳類)などとは決して思われていませんでした。
昔の人に「イルカは哺乳類であり、その先祖はウシと同じで、陸上に棲んでいた」と説明しても一笑に付されることでしょう。
それはそうです・・・・イルカは海に棲み、陸に揚げると魚のように死んでしまい、まして陸上を走ることなどありません。

サメは魚類、イルカは哺乳類で、イクチオサウルス(魚竜)は爬虫類(恐竜ではありません)です。
この三者はかなり遠縁なのですが似たような環境で似たようなものを食べていたのでデザインが似通ってしまいました。

イルカとサメの配色は、背中が黒で腹は白ですが、これは水中での保護色の基本です。イクチオサウルスの配色については不明なのですが、同じく水棲爬虫類のワニやカメは「腹白」ですので、背中を黒く、腹を白にと配色しました。

最後のフクロオオカミの映像を見ますと、これはオオカミ(有胎盤類)の仲間そのものなのですが、カンガルーと同様、有袋類です。
フクロオオカミとオオカミ、どちらも肉食獣という同じような生態的地位を占めることによって似かよったデザインとなっています。
このように遠縁にある生物が、場所や時代が違いながら、似かよった生態的地位を占めることによって姿かたちが似かよってくることを収斂進化といいます。

企業にも同様の収斂進化が見られます(・・・と、いいましても本社ビルや経営者の体型が似てくるわけではありません)。
企業には生物のように目で見えるような姿かたちがありませんので、収斂を見るためには企業の競争を形として目で見えるように変換しなければなりません。
競争曲線は企業の競争を形として表すためのツールで、企業の競争を形として表すと、競争の形の収斂がみえてきます。

変えないという戦略がベストな場合、競争曲線の形は決まって神田の蕎麦屋に近似してきます。価格も高めに設定されており、客の所得層は中~上。伝統や歴史に基づいたブランドイメージ。
神田の蕎麦屋の場合、スーパーやラーメン屋で使われるような「ポイントカード」は客にとって関心がないか、場合によっては逆効果になる可能性もあります。
味さえも、美味しくしてはいけないのです。
美味しくすれば「味が変わった」とクレームきます。

ルイビトンにはバレスチック・ナイロン(防弾チョッキでも使用されている丈夫なナイロン)は不要でしょうし、ロレックスにアレルギーフリーのチタンやソーラー発電は似合いません。
神田の蕎麦屋、ライカ、ハーレー・ダビッドソン、ルイビトン、ヨーロッパの古いレストラン、京都の料亭、ロレックス、ジッポーなど、地域や業種さえも異なるのですが、競争曲線を描きますとほぼ同様の形となります。

「安定」の他にも「イノベーションのジレンマ」の事例もほぼ似たような形(グラフ)に収斂されます。