山梨県に仏教青年会のOBが住職を務める禅寺があります。学生時代、このお寺に、仏教青年会の有志と1週間ほど座禅の合宿に行きました。朝から夕刻まで座りっぱなし。足はしびれる、腿の筋は伸びきる(結構つらいです)、腰は痛くなる、肩は凝る・・・・初心者にとって座禅というのは重労働なのですね。
・・・達磨大師は壁に向かって9年も座禅を組みました(達磨さんに足がないのはそのためです)。ただし、素人が何も書いていないただの壁に向かって精神を統一しようと思っても、10分から15分が限界でしょう。あとは妄想ののおもむくままです。達磨大師は「無」に意識を集中して「無」の境地になっていたのでしょうか?常人にははかり知れません。
意識を集中するには、抽象的なものであるか、物理的なものであるかを問わず、集中の対象となるものが必要です。
座禅合宿で、初心者の私たちは適当な石を拾ってきて、その石に意識を集中するように指導されました。
曼荼羅は、曼荼羅の上に目隠しをして華を落とし、落ちた先の仏様と縁を結ぶという密教の儀式(結縁灌頂)に使われるほか、観想つまり瞑想をする際に意識を集中する対象物としても使われます。つまり、精神集中のための道具でもあるのです。
さて、経営にどのように意識を集中するのか?経営をぼんやりと、何となく捉えていたのではしたものとして捉えるのではなく、マンダラチャートとして一枚の紙に整理すると、経営に意識を集中することができます。
経営マンダラは文字で書いたものなのですが、曼荼羅の構造そのものに絵画的な要素があります。戦略マンダラチャートを描いて意識を集中していますと、マンダラが経営全体を描いた一つの絵に見えてきます。
目をつむって「モナリザ」の絵を思い浮かべてください。細部を思い浮かべるのは無理としてもぼんやりと思いだせるはずです。経営マンダラもこれと同じような現象が起こります。
マンダラから離れても、どこにどのような課題を書いたか、(ぼんやりだとしても)思い浮かべることができます。・・・数年たっても、あの場所にはあの課題が書いてあった・・・と、思いだすことができるのです。
まずは集中です。次に必要なのがリラックスです。新しいアイデアは、集中した後リラックスしているときに浮かんできます。科学における偉大なアイデアの発見された場所は、果樹園、夢の中、ゴルフ場、風呂場・・・・と、およそ「科学」とは場違いな場所が多いことに気が付きます。このような場所で、ほとんどの人はリラックスするのではないでしょうか?
経営に意識を集中すると「見えないものが見えてくる」ということがあります(もっとも100%保証するものではありません)。それまで気が付かなかったことに気付くようになります。
気付く場所は、電車の中、トイレの中、飲みながら、私との『雑談』の最中・・・と様々です。会社の会議室だけがアイデアを出す場所とは限りません。
まずは9マスのマンダラに描かれた課題に、意識を集中・・・そしてリラックス。
経営マンダラは、新しい気づきを誘発するためのツールでもあります。気付きは、マンダラチャートに既に記載されたことではなく「マンダラチャートにはまだ記載されていないこと」なのです。そこで、マンダラチャートの「外周の余白」を「未知の領域」と名付けました。