自然界では、生物は常に変異し、生存に不利な変化は取り除かれ、生存に有利か中立な変化は残って蓄積される。
この変化の蓄積はつくづく偉大なもので(40億年かかりましたが)、人工知能を作る「知能」という「超イノベーション」まで創造してしまいました。
ジャックモノーが言う通り「翼の生えた偶然」です。
学習アプローチは進化論的です。ただし自然界では偶然の変化と考えられているのに対し、企業での変化は偶然+意図的です。
・学習アプローチ
「内」の「過程(プロセス)」に着目するアプローチです。
資源・アプローチは、企業に高収益をもたらす原因を独自の経営資源にあるとしたのですが、その経営資源をどのように蓄積するかについては多くを提供していません。
それに対し、学習アプローチは技術や情報、経験といった「見えざる資産」が蓄積されていくプロセスそのものに注目するものです。
従来の戦略論では、戦略は「事前の計画」と「その実行」というように2つに分かれていました。
しかし、「事前の計画」が間違っていることもしばしばです。このような状況で無理に計画を実行すれば事態はさらに悪化します。
将来は不確実で予測しにくいというときは、実験と失敗を繰り返し、漸進的に学びながら、実践的な技術や経験を身につけ、成功に結びつけるということが有効となります。
また、このように先が見えないような状況では、意図的にトップダウンで戦略を策定するより、活動を通じて自然発生的に生成された戦略の方が有効である場合もあります。
このような一見、戦略とはいえないような戦略を「創発的戦略」といいます。
・セレクション。ネットワークとの関連
資源アプローチでいうところの資源の蓄積の仕方に関連してきますので、セレクション・ネットワークで示めすと資源アプローチと同じになります。
青島・加藤氏は学習アプローチを「内」の「過程(プロセス)」と表現していますが、「学習の結果の判定」を行うのは、企業「外」のネットワークでもあります。
ちなみに、生物の進化が自然選択という外的要因によって淘汰される(自然淘汰)のと似たようなものとなります。
つまり、学習アプローチはセレクション・ネットワークで生き残り、できれば繁栄をも狙うための学習ですので、ネットワークの構造の変化を意識しない学習は、需要を超えた技術の蓄積(オーバースペック)となり無駄な学習となる危険もあります。
また、近年の日本の企業の停滞が、ネットワークの構造の拡大に視野を向けず、ガラパゴス化したということも学習したいところです。