同名の歌も映画もありますが、セレンディピティの本当の意味・・・準備された偶然の発見
「運は準備を怠らない者に味方する」(Chance favors the prepared
mind)。ルイ・パストゥール(フランスの生化学者、細菌学者 1822年12月27日 – 1895年9月28日)の言葉。
バタフライ・エフェクトとは、蝶の羽ばたきで起きた、ほんの小さな風が、時間の経過とともに、地球の反対側でハリケーンとなるカオス理論の特徴の一つです。
つまり、ブラジルで蝶が羽ばたくと、カリフォルニアで竜巻が起きたり、南太平洋で台風が発生する、といった現象です。
え???しかし、ほんとうに、ブラジルで蝶が羽ばくと、カリフォルニアで竜巻が起きたり、南太平洋で台風が発生するのでしょうか???。
蝶の羽ばたきに、竜巻や台風を発生させるなんて、そんなに大きな影響力はない、と考えるのが常識でしょう。蝶の羽ばたきは木の葉さえ揺らすこともできません。
ところが、バタフライ・エフェクトは、ビジネスの世界ではしばしば起こる現象なのです。
大正時代、ある場所で高下駄の歯が抜けて困っていたおばあさんがいた。このとき一人の青年がこのおばあさんを助けた。助けたついでに改良ソケットをひらめいた。
自信満々で上司に話したが、相手にしてくれなかった。そこで自分で会社を興してソケットを売った。(松下幸之助物語
松下電器産業HP)松下電器産業の2007年3月期の売上(連結)は9兆1千億円、従業員数(連結)は30万人を超える
(松下電器産業HP)。
戦後の焼け野原の屋台に、一杯のラーメンを求めて長い行列を作っている人々の姿をみて、もっと手軽にラーメンが食べられないかと思った人がいた。
そこでインスタントラーメンを開発することにした。
ところが味付けしたラーメンの保存方法がわからない。
夕食に奥さんが夕食にてんぷらを揚げるのを見た。
材料を熱い油におとすと水分が蒸発してコロモにたくさんの穴があく。
ラーメンも同じでは?とひらめいた。
特許299524号「即席ラーメンの製造法」・・・チキンラーメンは爆発的に売れた。
日請食品の2007年3月期の売上は3582億(連結)である。(日清食品HP)
20世紀の初頭に、昆布のうまみの研究をしたら味の素ができた。
2011年3月期の売上は1.2兆(味の素HP)。
うま味調味料分野では、「味の素」が中国を除く市場で約50%を占め、世界のAJINOMOTOになった。
気づきは小さな神経細胞の一瞬の反応であり、蝶の羽ばたきのようなものです。
たとえ何かに気づいても、それ(気づき)だけでは葉さえも揺らすことができません。
しかし、「偶然」や「気づき」が大きな変異を引き起こすということが、ビジネスの世界ではいたるところで起こります。
・・・・セレンディピティという言葉が似合いますのでセレンディピティについて説明しましょう。
セレンディピティ
セレンディピティ 広辞苑
おとぎ話『セレンデップ(セイロン)の三王子』の主人公がもっていたところから、
思わぬものを偶然に発見する能力。幸運を招きよせる力。
「セレンディピティ」という言葉をつくりだしたのは18世紀の文筆家ホリス・ウォルポール伯爵です。1754年に彼が友人に宛てた手紙の中で、この言葉を使いました。
ウォルポールによると、この言葉は「偶然と才気によって、探してもいなかったものを発見する」ことを意味します(セレンディップの三人の王子たち 竹内慶夫編訳 偕成社文庫 2006年10月 p188)。
「探してもいなかった」の解釈ですが、「失くしたものを偶然に見つけた」というようなことはセレンディピティではありませんが、探し求めていた、あるいは研究し続けていた「未知のものを偶然に探し当てた」というようなことはセレンディピティです。
王様から金の王冠に混ぜ物があるかどうか確かめることを依頼されたアルキメデスが、風呂に入ったときに湯船からお湯が溢れだしたのをみて「アルキメデスの原理(比重)」を発見した、というのはこれはもう立派なセレンディピティです。
また、この言葉では「能力」や「才能」が重視されます。「拾った宝くじが1等だった」というのはこの言葉の意味するところではありません。
セレンディップな発見のほんの一部を挙げてみることにします。この他にも沢山ありますので思い浮かべて下さい。イノベーションのほとんどが、実は計画されたものではなく、セレンディップなものなのです。
「電気を通すプラスチック」(導電性高分子)2000年ノーベル賞 筑波大学白川英樹教授
1967年、東京工業大学の助手をしていた白川氏に、韓国人留学生がポリアセチレン(黒い粉末)の合成実験をしたいと申し出があった。
韓国人学生は触媒の量を1000倍も多く入れてしまったため出来上がったのは「銀色のプラスチック」であった。
ミリモルのミリを見落としたらしいのだが、指示が間違っていたのか留学生が間違えたのかは不明。
(セレンディピティ 宮永博史著 祥伝社 2006年9月 p14)
ポスト・イット スリーエム
スペンサー・シルバーが開発したのは「くっつくが、はがれてしまう」という接着剤だった。この時点では用途不明。
用途を発見したのは、同じスリーエム社のアート・フライ氏である。同氏は聖歌隊のメンバーであったが、1974年12月の教会で、すぐに次の讃美歌を歌えるようにとはさんでおいた「しおり」が落ちてしまった。
(セレンディピティ 宮永博史著 祥伝社 2006年9月 p92-93)
ダイナマイト
アルフレッド・ノーベル
ニトログリセリンの保存容器に穴があいて、ニトログリセリンが漏れていたが、容器の周囲にあった珪藻土が安定剤として働き、ニトログリセリンが固まっていた。
(セレンディピティ 宮永博史著 祥伝社 2006年9月 p16)
ペニシリン アレキサンダー・フレミング
実験の培地の一つが青カビに汚染されていた。
ジャスト・イン・タイム方式 トヨタ
商品がなくなると補充するというスーパーマーケットの陳列からヒント
鳥のフンを探す
1965年二人の電波天文学者が大きなアンテナを使って研究をしていたところ、背景雑音に悩まされていた。
彼らはてっきり鳥のフンのせいだと思い込み、鳥のフンを探していた。
しばらくして彼らはこの雑音がビッグバンで宇宙が誕生したときの宇宙背景放射だと気がついた。
彼らはビックバンなど探していなかった。ビッグバン仮説を立てたのは別の研究者(ほとんど忘れられかけていた)で、実証したのは鳥のフンを探していた方だった。
(ブラック・スワン下 ナシーム・ニコラス・タレブ著 望月衛訳 ダイヤモンド社 2009年6月 p8-9参照)
この他にも
公園でお嬢さんの写真を撮ったら「パパ今撮った写真を頂戴!」と言われた(ポラロイドカメラ)。
貴重な「液晶」の素材のビンのフタをを開けっ放しにして帰ってしまい、一瞬真っ青になったが、空気に触れることにより液晶の寿命が延び、実用化できた(シャープの電卓)。
などなど、枚挙にいとまがありません。
偉大なイノベーション(新兵器の開発)をみると、実は事前に計画されたものはなく、セレンディップなものばかりなのですが、従来の戦略論では取り扱われていません。
「こんなの戦略?」と思われるかもしれませんが、戦略よりも大きな成果があるのでしたら、戦略論でも取り上げるべき・・・と思うのですが、いかがでしょうか?