補足 老舗大国ニッポン その1

ヨーロッパを旅行しますと、良く保存された古い街並み、そして、そこからにじみ出る「伝統」に思わず圧倒されてしまいます。
ロンドンのリージェント通りを観光したときのこと、ガイドさんが「100年前に来てもこの通りの景観はほとんど変わっていない」と言っていました。

日本で築50年のマンションといえば、相当古く、恐ろしくてとても住む気にはなれませんが、地震のほとんどないイギリスでは「築○○年」という概念はないようです。
従って「減価償却」という概念もありませんでした(今はどうか知りません)。

しかし、首都のメインストリートの景観が100年もの間変化していないというのは驚きというか、さすが伝統を重んじる国です。
日本ではとても考えられません。
100年で驚いていると次に行ったフランスのシャンゼリゼ通りで200年。
さらに、ローマの裏路地でなんと600年(‼)ほとんど景観が変わっていないのです・・・

このような先入観を植えつけられている私ですので「世界で一番古い企業はどこにあるのでしょう?」と聞かれると、やはり伝統を重んじるヨーロッパのどこかの国、イギリス、フランス、ドイツ、それともイタリア・・・と答えたくなります。
・・・ところが、答えは意外にも日本で、「金剛組」という企業です。
それではどれくらい前に創業したかというと、江戸時代をはるかに飛び越えて平安時代、奈良時代も飛び越えて、何と西暦578年で飛鳥時代になります。
金剛組は、大阪の四天王寺建設のため金剛重光によって創業されました。
金剛重光は百済の人で、聖徳太子が招聘されたとされています。
ただ、西暦578年ですと聖徳太子(574年~622年 生誕から逝去の期間は別説もあるがこの近辺)はまだ幼児ですので、摂政のどなたかが聖徳太子の名で招聘したのでしょう。

このときの世界史をみると驚きます。
イギリスではゲルマン系のアングロサクソン人が大陸から侵攻して小国家群に分かれ争い、七王国時代といわれる混戦状態、アルフレッド大王(849年~899年)がイングランドを統一する300年も前のことです・・・イギリス人にこの話をしますと少なからず驚きます。
この頃のヨーロッパはゲルマン民族の大移動がようやく終息し、中世と呼ばれる時代が始まった頃でまだ騒然としています(つい最近まで騒然としていましたが)。
ちなみに、マホメットがイスラム教を開設したのが610年です。
つまり、金剛組はイスラム教より歴史の古い、文字通りの世界最古の企業ということです。
・・・ところで、日本には創業千年以上の企業が7社もあります。

日本は世界に冠たる老舗大国で、200年以上続いている「老舗」の数が突出しています。
長寿企業には小規模の同族経営が多いので把握しにくいせいでしょうか?調査機関によって数が若干異なります。
表で日経とあるのは日本経済新聞社の「200年企業」(200年企業 日本経済新聞社 日経ビジネス 2010年1月)に記載されている後藤俊夫氏の調査、聯合(れんごう)は韓国の通信社の「聯合ニュース」が韓国銀行の調査結果です
(http://japanese.yonhapnews.co.kr/economy/2008/05/14/0500000000AJP20080514003900882.HTML)。

日  経 聯  合
日本 3113 3146
ドイツ 1563 837
オランダ 記載なし 222
フランス 331 196
イギリス 315 記載なし

聯合の報告では、世界で創業200年以上の企業は5586社(41カ国)で、老舗の半数以上が日本に集中しています。
日本は小さな島国で、人口密度が高いといっても世界の人口に占める割合は1.9%(日本1.3憶、世界70億で計算)にすぎません。
最近でこそ、西欧の国々と肩を並べられる先進国となりましたが、江戸時代には、近代文明の発祥の地、ヨーロッパからはるか遠く離れた「極東」の小さな島国に、伝統を重んじるヨーロッパ全土を凌ぎ、世界中の老舗の半数以上が「日本」のい偏在しているのですから、韓国人もビックリでしょう(先にも述べたとおり、聯合は韓国の通信社です)。